Side Chapter「頼もしい後輩」
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Skyf Lute
おたんぬ様主宰のブルプロアンソロ3に出させていただいた小説になります。 ジェイク&ミューリィへの感謝を込めて
澄み渡る青と、そこに映える純白の雲。 気持ちの良い晴天の下、マグナ大陸有数の商業都市、アステルリーズはいつも通り活気に満ち溢れている。 「あらジェイク、ここに来るのは何だか久しぶりね」 開拓局の最上階、眼下のアステルリーズを眺めていたジェイクに声をかけたのは、開拓局で総合案内係を務める受付嬢、ミューリィだった。 「Heyミューリィ! 相変わらずCuteだゼ」 「ありがとう。ジェイクも元気そうで何よりよ」 いつも通りの返しに軽く微笑み、ミューリィは手すりに体を預けるジェイクの隣に並ぶ。気持ちよく吹き付ける風は、かすかな海の気配がした。 「カウンターに居なくて良いのか?」 「ちょっと休憩にね。ジェイクは何を?」 「ん、あぁ、嬢ちゃん達の事をな」 ジェイクは、橋の向こう、まさに出会いの場である、『崖の遺跡』の方を見る。あの出会いを、ジェイクはまるでついこの間の事のように鮮明に覚えている。 発見されて間もなかった遺跡で偶然にも邂逅した、顔馴染みの亜人の少女、そして、その同行者。 遺跡のモンスターに一人で対処してみせたという実力を買って、ジェイクが冒険者の道を勧め、開拓局に推薦した。 「あのルーキーが、今や竜王をも倒す最強の冒険者だ。流石のオレもビックリだゼ」 大物になるだろうとは思っていたが、ここまでの偉業を為すとは、まるで想像していなかった。 「えぇ、登録試験の頃が懐かしいわね」 ジェイクの推薦ということもあり、軽い実力確認のつもりで登録試験に選定した『レイクリッド坑道』の調査依頼。棲み着いたムーク達を相手に、十分戦える事を示してもらうだけの筈だったが… 「まさかオーガに遭遇して、しかも倒して来ちゃうなんて、全くの予想外だったわ」 受付で彼らから話を聞いたミューリィが急いで報告すれば、なんて大型新人だ! と開拓局の職員は皆驚いたものだった。 もっともそれと同時に、新人が相手をするには危険すぎるオーガが登録試験の場に居たという重大問題の対処に追われる必要もあったが。 「急いで調査隊を出したり、あの時は大変だったわ。でも、オーガに遭遇したのがあの人達だったのは、不幸中の幸いでしょうね」 「そうだな、もし本当の新人だったら…」 冒険者の中にも苦戦する者が居るのがオーガだ、どうなっていたかは言うまでもないだろう。 「推薦したオレが言うのもなんだが、あの時からアイツは並の新人じゃあ無かったからな」 ジェイクが思い出すのは『巨竜の爪痕』での一件だ。冒険者登録直後の二人と共に向かったあの依頼。 最奥に潜んでいたターゲットは想定以上に強力で、そんな強敵をジェイクとの共闘だったとはいえ倒してしまえるのだから。 「まあその分、厄介事にも愛されてるみたいだが」 そう苦笑するジェイク。 彼が関わった事といえば、バーンハルト公国での公王暗殺に端を発する一連の事件だけだが、話に聞くところでは、星霊祭の裏で起こっていた教会の襲撃事件でも侵入した賊の撃退に協力していたと言うし、コアニアニ森林では竜族と交戦したとも聞く。 そもそもとして、あの守銭奴な亜人の下僕になる時点で、波乱万丈が運命付けられているのだろう。 「これからも色々あるんだろうが、アイツらなら何とかするだろ。それに…」 「それに?」 ミューリィはそっと続きを促す。 「いざって時は、トップオブトップのこのジェイク様が、助けてやるからな」 そう言うとジェイクは少し照れて、そろそろ帰るゼ、とミューリィに背を向けた。 「ええ、またね」 一階まで降りてきて、ジェイクはふと壁の方に目をやった。そこにあるのは、開拓局の歴史に名を残す偉大な冒険者たちの名を刻んだ石板。 以前は最後尾にあった自身の名、それに続いて記された名前を見て、ジェイクはふっと笑みを浮かべる。 ――まったく、頼もしい後輩で嬉しいゼ。
